時間の流れを感じるとき/朔のカンパーニュ

時間の流れを感じるとき/朔のカンパーニュ

山間の道を奥へおくへと進むと

そこには小さなパンの工房があります。

何度も道を曲がり、坂を越え

近くの方に案内してもらい

やっとたどり着くことができました。

そこは

風の音が聞こえ、

鳥のさえずりが聞こえるような場所でした。

「なにかを創ることが好きだった」と語るのは、自宅でパン工房を営む今若さんです。自宅の一部をパン工房として改装して、大きなオーブンを入れました。本格的にパン作りに打ち込むことができる場所は、山間の緑に囲まれた場所。静けさの中に鳥の声や、風の音など自然の音が聞こえてきます。

今はこんなに静かですけどね、子供たちが帰って来たら賑やかですよ。ダイニングは広く、小窓から工房を眺めることができる造りになっています。当時は市内で暮らすことも考えていたそうですが、たくさんのことを考える中で、夫の実家であるこの家で暮らすことを選んだとのこと。木々に囲まれ、ストーブで暖をとる、自然な暮らしであるはずなのですが、市内に住む私たちからみると異空間のようであり、居心地のよさに包まれていました。

季節の果物や旬の野菜を水につけ酵母を起こしているところを見せてくださいました。朔のカンパーニュでは、イースト菌は極力最小限の使用に抑えて、ゆっくりと時間をかけて発酵させていきます。イーストの他に、果物や野菜から起こした自然の酵母も使用しています。冷蔵庫には、ぶどうや柿、リンゴなどたくさんの種類の酵母が保管されていました。瓶詰めになった酵母は蓋をあけた途端にシュワ―っと炭酸のように泡立ちます。自ら作り上げる酵母は自然の中からいただくことができる大切なもの。

生地の発酵と成形が終わるとオーブンへ一気に流し込みます。発酵直後のパンはとても柔らかく、表面が肌のように波打っています。パンも呼吸をしているようであり、延びたり縮んだり、一つ一つが可愛らしい形をしており、まるで生きているかのようです。

一つひとつのカンパーニュはとても大きく、なんだか可愛らしい。自然の中から生まれ、今若さんが一つヒントを加えることで、新しいものが生まれています。「こんなに大きくて可愛らしいと食べるのが勿体なくなっちゃいますよね」

パンが出来上がると、ずらりと並びます。「ちょっとこっちに来てください」「えっなんですか?」「シーっ、いいから静かにして聞いて」

 

静かな部屋の中でかすかに、パリッ、パリッという音が聞こえてきます。これは「天使のささやき」といわれるもので、出来たてのパンが奏でる作り手しか聴くことができない音。温度差のためにパンの表皮にひびが入り、パリッ、パリッという音が聞こえるのです。「パンって生きてるんですね。」何も知らない私は思わずつぶやいていました。

忙しなく流れていく時の中で、私たちは何気にパンを食べる機会があると思います。我が家では朝食に食べることが多い。ただ、日頃ふと気にしないようなことに深い意味と、見落としてはいけない価値があるような気がしてきました。

その地に住み、その空気の中で育つ。先日、何かの文献で「土着」という意味を考えさせられていた私には何かピンとくるものがあります。その地域を思い、そこへ住み暮らす。山にあるもので食事を作り、自然の恵みをいただく。実は簡単なことのようであり、そう簡単ではありません。それは大切なものであり、私たちが一番ほしいものなのかもしれません。そんなことを想っているうちに、あっという間に時間は過ぎてしまい、早々に帰らないといけない時間に。

今若さんが作るカンパーニュにはいくつかの種類があります。酵母に関してはその季節に応じたものを使用しているため、その季節にあった味わいを楽しむことができます。カンパーニュの種類はプレーンの他、ドライフルーツやチーズ、ナッツなどを使ったものが数十種類。私たちガールズの中ではチーズのカンパーニュが一押しという声が多かったです。

地域のイベントでの出店か委託販売が主なので気になる方は、
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